働くトライアスリートなら誰もが参加できるコミュニティTRIBizeez、始動

「トライアスロン×仕事」で相乗効果 は生み出せるか? トライアスロンが、ビジネスライフにもたらすメリットとは何か? 働くトライアスリート同士が、そうした話題で気軽に交流して、学びをともにする、新しいコミュニティ企画 が起動。このコミュニティをサポートする『パワグラ』の産みの親にして、自身熱心なトライアスリートでもある小嶋隆三さんと、フルタイムワーカーとエリート選手の二刀流で活躍する榊原佑基さんが、その可能性について語り合った。

撮影協力=Mr.green 呉服町本店

小嶋隆三Ryuzo Kojima

歯科医師、株式会社RMG代表取締役。大学卒業後、大学病院などで実績を積み、2013年、29歳のときに個人クリニックを開業。同時に株式会社Ryuメディカルグループ(現RMG)を起業。その後、食の面から健康な生活スタイルをサポートする予防事業にも進出し、2020年にはアスリートのための自然派グラノーラ「パワグラ」を開発、販売を手がける。年間10前後の大会に出場するトライアスリートでもある。1983年、静岡生まれ。

小嶋隆三

榊原佑基Yuki Sakakibara

㈱交通建設に勤務にするフルタイムワーカーにして51.5kmやロングの日本選手権で戦い続けるエリートトライアスリート。ミドル~ロングに主戦場を移した現在は佐渡や諏訪湖など国内主要大会での表彰台入りやアイアンマン70.3&アイアンマン世界選出場が目標。今季はWTCS横浜(エイジ総合3位)、スワコエイトピークスミドルトライアスロン(年代別優勝)、野尻湖トライアスロン(総合3位)に出場。1991年、神奈川生まれ。

榊原佑基

なぜ、私たちは働きながらこのスポーツを続けるのか?

ルミナ(以下LM) 働くトライアスリート同士が交流する新たなコミュニティ企画をスタートするにあたって、まずは最初のメンバーとなるおふたりに、「トライアスロン×仕事」というテーマで、お話しをうかがいたいと思います。小嶋さんはトライアスリートにもおなじみの「パワグラ」の産みの親ですが、それ以前に歯科医師、企業経営者としてどんなキャリアを積んでこられたのでしょうか?

小嶋 大学を卒業後、大学病院や個人クリニックなどで現場経験を積んだ後、2013年、29歳のときに今の歯科医院を開業しました。この医療事業と同時に始めた介護事業と、その後、始めた予防事業の3事業を展開しています。「パワグラ」やこのサラダ専門店「Mr.Green」(※今回の取材場所)などは、予防事業の一環として展開しています。

いずれも、アスリートから一般の方まで、社会の人がより簡単に健康的な食生活を送れるように、医療従事者として何ができるか考えて、思いついた事業なんです。LM 榊原さんは、大学時代からトライアスロンを始めて、卒業後、今の交通建設に入社されたんですよね?

昨年12月、東京・お台場で開催された日本デュアスロン選手権に出場する柳原さん

榊原 大学では理工学部に所属していたので、勉強してきたことを生かせる会社がいいなと。鉄道関係の建設を手がける会社なので、より社会に貢献できるイメージがもてて、入社して、今年で31歳なので9年目ですね。主に施工管理などをやっています。

新卒で入社後は、一時、競技力が低迷した時期もありました。それでもトライアスロンをやめようと思ったことはなくて、今はミドルやロングのほうにシフトしつつ頑張ってみようと。

大学を卒業したときに、仕事一本に絞って、トライアスロンをやめるという選択肢ももちろんあったのですが、学生時代も理工学部で学業と両立しながらトライアスロンをやっていたので、その延長で両方やらなきゃダメだよなと、自分の中で、そう思ったんです。

社会人9年目の今もエリートカテゴリーでレースできる実力を維持し、ミドル~ロングでさらに上を目指している

LM 小嶋さんがトライアスロンと出会ったのはいつですか?

小嶋 僕がトライアスロンを始めようと思ったのは、33、34歳くらいのころ。ちょうどノロウイルスにかかって、仕事を休んで、寝込んでいたとき。大学までは野球をやっていたんですが、働き出して30歳超えてから、運動もそんなにしていないし、フィジカル面で必死にやることってあんまりなくなったなぁと。

じゃあ、今から取り組むとして、何が一番、辛いかな? と考えたときに、真っ先に思い浮かんだのがトライアスロンでした。当時は仕事の忙しさに負けて、メンタル的にもいつもイライラしていたので、健康とのバランスをとる意味で、トライアスロンを始めようと思ったわけです。

実際、トライアスロンを始めてみて、仕事の面でもプラスになったのは、まずセルフマネジメント力を磨けるという点ですよね。限られた時間の中で仕事とトレーニングをどうスケジューリングしていくか――仕事をしながらトライアスロンをやることで、そうした自己管理能力が求められますから。

あとは仕事で嫌なことがあったときなんかも、トレーニングをすると頭がスッキリして、ポジティブな気持ちになれるなと思って、その根拠を少し調べてみたんですが、有酸素運動をすることで幸せホルモンに近いようなBDNF(神経栄養因子)が分泌されて脳機能も高まるということが科学的にも証明されているそうです。

LM 榊原さんはトライアスロンを続けてきた後、会社に入って、ビジネスパーソンになったわけですが、仕事とトライアスロン、それぞれについて将来に向けたビジョンはありますか?

榊原 トライアスロンに関しては競技力を高めていくことはもちろん、競技成績以外でも、YouTubeやインスタなど、自分が発信できることの幅を広げていきたいと考えています。仕事の面では、建設業全般の課題でもあるんですが、人材不足の傾向があって、若い人材が入ってきにくくなっているので、その面でも、自分自身が広告塔になって、「仕事以外の時間も充実させられる」といった会社のイメージPRに役立てたらいいなと、ずっと考えています。

競技力が低迷した時期もあるという榊原さん競技、仕事に慣れるにつれて視野も広くなりとのバランスもとれるようになったという

VUCAの時代にポジティブでいるために

LM 小嶋さんはトライアスロンを始めて5年くらいとのことですが?

小嶋 本格的に取り組み始めたのはこの2~3年、パーソナル指導を受けるようになってからですね。個人的にカスタマイズされたトレーニングメニューの提供を受けるようになって、その成果を具体的な数字(レース成績)で見てみたくなったのが大きいですね。

仕事では、なかなかすぐに結果が出るということはないじゃないですか。決算は1年後だし、日々取り組んでいることの評価はすぐにはできない。その点、トライアスロンの場合は、日々取り組んできたことの結果が、そのまますぐに数字として出てくる。そうした、小さな成功体験が得られやすいのは、トライアスロンの魅力のひとつかなと思います。

「VUCA(ブーカ)の時代(※)」と言われるように、先行き不透明で、どこをゴールとしたらいいかも明確には分からない不安の中、進まなければいけない時代ですが、トライアスロンを通じて一日一日、前へ進んでいく手ごたえが得られることで、自信がつくというか、仕事の面でも「よーし、行くぞ!」と、ポジティブになれる気がしています。

※VUCA(ブーカ)=ビジネス環境や市場、組織、個人など、あらゆるものを取り巻く環境が変化し、将来の予測が困難になっている状況を意味する造語

チームやエリアの壁を越えて交流できる「場」を目指して

LM 働くトライアスリート同士が、オンラインやリアルイベントを通じて集まって、「トライアスロン×仕事」の話をしたり、学びを共有したり、気軽に交流できるような「場」をつくれないか、ということで、まずはLINEに情報発信・交流拠点を置いた「TRIBizeez(トライビジーズ)」というコミュニティを立ち上げて、「パワグラ」ブランドとしてもそれをサポートしていただくことになったわけですが、小嶋さんが、このコミュニティ企画に期待することは?

小嶋 各地にいろいろなトライアスロンチームがあると思うのですが、そうした所属やエリアの壁を超えて、働くトライアスリートが交流できるようになっていければいいなと思います。

LM このコミュニティ企画のコンセプトを明確にする皮切りのイベントとして、たとえば、ライフスキル向上やチームビルディングといったテーマで企業での講義なども手がけているスポーツ心理学博士の布施努さんを講師に迎え、トライアスロンへの取り組みからビジネスパーソンとしての成長につながるヒントを得られないか、アドバイスを乞うというのはどうでしょう?

小嶋 それはいいですね。

榊原 あとは、合宿とかランニングイベントだと、他のチームのトライアスリートとも交流しやすいので、ゆくゆくはそうしたリアルイベントも展開できたらいいですよね。

小嶋 リアルでの交流が活発になってきたらエリア性も出てくるので、地域ごとに「トライビジーズ」ブランドの支部みたいなものも開かれるようになったら面白いですね。

毎日「楽しめる」食事で健康な生活をサポートしたい

LM 最後に「パワグラ」を作ったきっかけやこだわりも教えてください。

小嶋 日本の平均寿命は今、女性で87歳くらい、男性で81歳くらいですが、健康で生きられる「健康寿命」はそのマイナス10歳で、あとの10年は介護が必要だったり、なかなか自分らしい健康な生活が過ごせない。

そこには当然、国の医療費もかかっています。この問題を何とかするには、やはり健康でいられる期間を長くするしかない。ほどよく運動をして、日々とっている食事を改善して、生活習慣病などを防いでいくとか。医療従事者としてビジネスを展開するなら、そこにアプローチしていかなければいけないなと。

そこで「健康・予防」をテーマとして考え、展開してきたのが「Mr.Green」であり、「パワグラ」なんです。健康な食生活を続けるって、実際、意外とハードルが高いじゃないですか。

小嶋さんが静岡市内に2店舗展開しているサラダ専門店「Mr.green」では、ワンボールで手軽にタンパク質、カルシウム、ビタミン、食物繊維など多くの栄養を摂ることができる1食に置き換えられるサラダを提供している

カラダに良い食材を集めるのも大変ですし。今どき医師・栄養士監修の健康食品もいろいろありますが、栄養バランスは完璧でも食べ物として美味しくないと続かないし、ある種のエンターテイメント性もないと、食が進まない。

「パワグラ」は、ある知り合いから聞いたレシピで作ってみたグラノーラが美味しくて、弊社の管理栄養士に「これをもっとアスリート仕様に、タンパク質を多めにして、朝食でも必要な栄養をしっかりとれるようなのにして!」と頼んで作ってもらったのがはじまりなので、まずは食事として美味しいことを大事にしています。

榊原 一般的なグラノーラとあらためて食べ比べてみると、甘過ぎず、腹もちがいいという点で、全然違います。そのときどきの旬のフルーツと組み合わせたり、豆乳や牛乳など、かけるものを変えてみたり、いろいろアレンジしながら食べてきましたが、さらに今度は新しい味(ストロベリー、ココア)も出たので、より食べ方のバリエーションも増やせるようになりましたね。

練習時間が確保しやすい朝は、働くトライアスリートにとって重要。その忙しい朝こそ不足しがちなタンパク質などの栄養をしっかりとれる「パワグラ」。美味しいからこそ続けられる