働くトライアスリートなら誰もが参加できるコミュニティTRIBizeez、始動

トライアスロン×ビジネスライフを応援する「TRIBizeez(トライビジーズ)supported by PAWAGURA」のキックオフイベントを開催した。トライアスロンのような持久系スポーツに取り組むことで、イチ企業人・会社員として、経営者や管理職(マネジメント層)として、成長につながるヒントを得られないか? スポーツ心理学博士で、大企業でのライフスキル向上、チームビルディング講習なども多数手がけてきた布施努先生にアドバイスを乞う。

写真=小野口健太
Photographs by KentaOnoguchi

布施 努Tsutomu Fuse

スポーツ心理学博士。スポーツ心理学の最高峰ノースカロライナ大学グリーンズボロ校で博士号を取得。米国オリンピック科学技術委員会トップであったDr.Gouldを師とし、最先端のスポーツ科学をベースにフィールドでメンタルトレーニングを共に行える数少ないスポーツ・サイコロジスト。トライアスロンではオリンピアン小田倉真や古谷純平を擁する三井住友海上トライアスロン部のサポートも手がけている。
布施努WEBサイト スポーツ心理学で勝つ

布施 努

セミナーには、LINE公式アカウントに登録してくれたメンバーの他、このコミュニティをサポートする「パワグラ」の生みの親、小嶋隆三さんと、フルタイムワーカーでトップアスリートでもあるアンバサダーの榊原佑基さんも参加した。

2022年9月4日に行われたロング日本選手権(佐渡)で3位に入った榊原さん

自分の状況を知るストーリートレーニング

トライアスロンと私との接点と言えば、三井住友海上の選手のトレーニングを担当していることでしょうか。皆さんもご存知の、古谷純平選手、東京2020オリンピック代表の小田倉真選手、東京2020パラリンピックで、銅メダルを獲得した米岡聡選手とガイドの椿浩平選手です。

メダルを獲ったこともそうですが、一番印象的だったのは、2021年のオリンピック選考を賭けた世界トライアスロンシリーズ横浜のレースで、古谷選手がパンクしたことです。スイムを予想よりも良い位置で上がり、バイクも先頭集団の2〜3番手で回していて快調にレースは進んでいました。そこでパンクが起きてしまったんです。

もちろん、古谷選手とは綿密にトレーニングしていました。レースの前に「ストーリートレーニング」というのをしっかり行うのですが、これは、「レース中、こんなことが起きたらどうする? そんなときどう対処する?」ということを繰り返し行って、納得するストーリーを作り上げていくことです。

布施先生がトレーニングを担当している三井住友海上の古谷純平選手。とことん深いところまでマンツーマンで話し合う

パンクしてしまえば、そもそも10位以内が難しいのでそこは元々用意していなかったでしょうがストーリー作りが非常に上手な選手でした。このレースでトライアスロンの面白さと厳しさを思い知りました。

ストーリートレーニングをしていく上で大事になってくるのが、「CSバランス」(表1)というものです。自分の能力と自分の挑戦課題とのバランスについての表になります。

CSバランス

能力と挑戦課題がバランスしている状態、この表で言うと、「B1」や「A1」の辺りは、とても良い感じでレースや練習、または仕事が進められているときだと考えていいでしょう。 これが崩れてしまうと、修正が必要になります。能力をパフォーマンスと置き換えてみると、レース中うまくいかないことが起きてしまうと、パフォーマンスが下がってしまうことがあります。パフォーマンスが下がることで、表の「不安」の辺りになってしまう、さらにそこから思いっきり不安に傾いて、レース中に頭真っ白……ということが起こることもあります。

そこで、不安ゾーンをブレイクするためにはどうするか。それには、「今できることは何だろう」と考えて実行することです。今できることというのは、たとえば目標を最高目標(レース中の最大の目標:エイジ優勝するなど)ではなくて、最低目標(いつでもこれだけは必ずできるという目標・立ち返る起点:エイド間は歩かないなど)に切り替えてみる、というようなことです。

不安ゾーンに入ったときに対処法を知っているのといないのとでは、結果に大きく差が出ることになります。

TOKYO2020トライアスロン日本代表として出場した、小田倉真選手も布施先生のトレーニングを受ける