トライアスロンは仕事での成長につながるか?〈1〉

トライアスロンを楽しみながら仕事との相乗効果を生み出している3人のトライアスリートが登場した「TRIBizeez(トライビジーズ)supported by PAWAGURA」オンラインイベント第2弾(2022年11月24日開催)。

TRIBizeezの主催者・小嶋隆三さん(RMG代表)も交えて、それぞれのライフスタイルと、いかにトライアスロンと仕事の好循環を生み出し、自身の成長につなげているかについて語り合った。

大西勇輝さんYuki Ohnishi

学生時代は横浜高校野球部、順天堂大学トライアスロン競技部で活躍。教員、アウトドア系スポーツ施設の運営・プロデュース業を経て、現在サイクルアパレルメーカー「パールイズミ」でマーケティングを担当。「PI TRI」や「PICC」などのスポーツコミュニティーを主催するほか、PR活動や商品企画、サイクルプロチームのサポートなども担当。トライアスロンやサイクリングを通じて、生涯持続可能なアスリートライフを提案している。1981年、大阪生まれ。1児の父。

大西勇輝さん

前田直昭さんNaoaki Maeda

2013年にトライアスロンデビュー。51.5、IM70.3セントレア、宮古島など、ショートからロングまでレースを楽しむ。仕事では大学卒業後、プラントメーカーのエンジニア、経営コンサルタントを経て、化学メーカーに移りビジネスプロセスの改革を担当。現在はデジタル変革推進を手がけている。また、社会人2年目の2000年にNPOを立ち上げ、海川の清掃や子どもの環境教育などにも取り組んでいる。1976年、千葉生まれ。4児の父。小田原在住。

前田直昭さん

福田聡子さんSatoko Fukuda

ウィスコンシン州立大学卒業後、人材育成企業に入社。人材育成のスペシャリストとして活躍の幅を広げ、2000年にグローバル・エデュケーション株式会社を設立。大手企業向けのグルーバル化人材・自立型人材の育成を手がける。現在、クライアント約400社のグローバル人材育成をサポートしている。2020年から同社代表取締役。講師、コンサルタント、経営者として忙しい日々を送る中でトライアスロンと出会い、オリンピックディスタンスからアイアンマン、エクステラまで幅広くレースを楽しむ。1969年、東京生まれ。

福田聡子さん

小嶋隆三さんRyuzo Kojima

歯科医師、株式会社RMG代表取締役、TRIBizeezの主催者。大学卒業後、大学病院などで実績を積み、2013年、29歳で個人クリニックを開業。同時に株式会社Ryuメディカルグループ(現RMG)を起業。その後、食の面から健康な生活スタイルをサポートする予防事業にも進出し、2020年にアスリートのための自然派グラノーラ「パワグラ」を開発、販売を手がける。年間10前後の大会に出場するトライアスリートでもある。

小嶋隆三さん

競技歴20年、自分らしくいられるスポーツ

大西勇輝さん(以下、大西) 私はパールイズミというサイクルウエアブランドに勤めています。

大学を卒業して公務員、特別支援学校の教員をして、その後フリーランスでスポーツ施設の運営・プロデュースのほか、運動指導などにも携わる仕事をしていました。そして現在はパールイズミで基本的に月曜から金曜までオフィス勤務。今41歳ですが、38歳から人生初のTHEサラリーマン生活をしています。

仕事内容は、PICC(Pearl Izumi Cycling Community)で、自転車好きの人たちと一緒に自転車に乗って、自転車の楽しさを伝えていくコミュニティ活動、アパレルウエア・カタログに使うビジュアル撮影のディレクションやモデル、プロチームのサポートの窓口、WEBやSNSの更新、オンラインストア限定商品やコミュニティーのウエアなどの企画、店頭用POP・パッケージのデザイン等々。

マーケティング担当という名の「何でも屋」ですが、好きなスポーツに携わるという軸が通っているので、楽しく仕事をしています。

大学時代から競技歴20年超のベテラントライアスリートで、現在は仕事でも、自転車好きのユーザーたちと一緒に乗って、自転車の楽しさを伝えていくパールイズミのコミュニティ活動「PICC」の運営にもあたる大西さん(ご本人提供画像)

生活はもうすぐ4歳になるイタズラ好きの息子がいて、子ども中心の生活をしています。

トライアスロンは大学から始めて、20年以上続けています。自分に合っているスポーツ、自分らしくいられるスポーツです。

特に輝かしい成績があるわけではなく、最近では2019年に佐渡Aタイプを12時間ちょっとくらいで完走したという感じですが、とにかく楽しむというのをモットーにトライアスロンを続けています。

多忙でも、楽しく挑戦するのがモットー

前田直昭さん(以下、前田) 私は1976年千葉県生まれで今、46歳。神奈川県小田原市に住んでいます。サラリーマンとしてトライアスロンを楽しんでいる平均的なトライアスリートです。

特にトライアスロンの3種目のどれかを学生時代からやっていたわけではなく、高校時代は吹奏楽部でしたし、高校の終わりから大学時代はモトクロス(オートバイ)の競技に出たり、サーフィンをやったりしていました。

あるときから少しランニングするようになり、元々海はサーフィンで親しんでいたので、知人からトライアスロンに誘われて、2013年に大磯ロングビーチですごく短いレースに出たのがトライアスロンとの出会いです。そこから距離を延ばしながらトライアスロンの楽しさを知っていきました。

仕事もトライアスロンも楽しく挑戦するというのが私のモットー。トライアスロンは仕事の忙しさによって、たくさんできるとき・できないときがありますが、状況に応じて工夫しながら、練習やレースをやっています。

大手化学メーカーのDX推進役を務めるビジネスパーソンにして、プライベートでは海川の清掃や子どもの環境教育などを手がけるNPOの立ち上げ・運営など、トライアスロン以外にも常に意欲的に活動してきた前田さん(ご本人提供画像)

仕事は1999年に大学を卒業して環境プラントメーカーに就職し、しばらくエンジニアとして仕事をしていました。

就職の翌年、湘南海岸のビーチクリーンとか、そこにつながる川の清掃などを、仲間と楽しくやりながら、社会に恩返ししようとNPOを立ち上げ、今に至るまで活動を続けています。

2005年にコンサル会社に転職し、2011年に化学メーカーに入社。現在もここで仕事をしています。特に2018年以降はデジタル変革の推進役を務めています。

国内外を飛び回って仕事をしていますが、その中で色々工夫しながらトライアスロンを続けています。今日はそういうところでみなさんと共感できたり、何かヒントを与えあったりできたらいいなと思います。

仕事に充てる時間・エネルギーが85%

福田聡子さん(以下、福田) 私の場合、生活のうち仕事に充てる時間・エネルギーが85%。 2000年にグローバル・エデュケーションという、主に大手企業向けの研修をする会社を設立し、企業のグローバル&自立型人材の育成をしています。

ふたりで始めた会社ですが、素晴らしいクライアントさんとの出会いがあって、2020年には社員が30名になり、この年、代表取締役に就任しました。代官山に小さな自社ビルを建てて、ここを拠点に仕事をしています。

私の役割は3つ。ひとつ目はコンサルタントとして人と組織のグローバル化、組織活性化をお手伝いすること。ふたつ目は講師として年間100回ほど講演をしています。3つ目は会社の経営者。他に業界誌の連載記事の執筆や、ボランティア活動で障害者の方々の自立支援などもしています。

グローバル・エデュケーションのミッションは、企業の経営幹部や国内外の選抜リーダーを対象とした、世界中どこでも誰とでも新しい価値を作るプロフェッショナルの育成。

そのために、私たちは専門性の高いプロフェッショナルであること、クライアントの要望に寄り添う親しい友人のような存在であること、そしてこれを極めることで色々な方々がハッピーになっていくことをめざしています。

こういうことがやりたくてこの仕事を始めたので、会社の売上目標というのはなく、目標の数字をもった営業マンもいません。

こういうスタンスがどれくらい受け入れられるかなと思っていましたが、この22年間で約400社、業界のトップ5くらいに入るお客様のお手伝いをさせていただいています。

日々の生活のうち、仕事に充てる時間・エネルギーが85%という福田さん。それでも趣味のトライアスロンでアイアンマンデビューを果たし、最近はMTBとトライアスロンの両立もめざしているという充実ぶり(ご本人提供画像)

トライアスロンは2017年ルミナの木更津チャレンジでデビュー、2019年6月にアイアンマン・ケアンズ完走。そこから、やはりルミナの企画で久保埜一輝コーチのアイアンマン・チャレンジに参加して、9月にアイアンマン台湾でエイジ5人中3位。

コロナ禍で会社がかなり影響を受け、第二の創業期という感じで必死に仕事をし、少し落ち着いてきたところで2021年、なぜかマウンテンバイクにハマり、トライアスロンとマウンテンバイクを両立しようという夢が生まれました。

現在はまた2023年のIMケアンズ完走を目指して、色々な仲間やコーチに教えを受けながらトレーニングをしています。

家族との時間を大切に。
平日は「短い昼トレ」がメイン

大西 私の場合、年間通じて大体、以下のような感じで過ごしています。

大西さんの「ある1週間」

基本、週5日オフィスに行って仕事。通勤1時間20分くらい。もうすぐ4歳の息子中心の生活をしつつ、時間を工面しながらトレーニングしているので、昼休みに何かトレーニングするというのが私にとってのポイントになっています。

早起きは得意なんですが、コロナ禍になってから時差出勤になり、私は朝8時という一番早い始業時間を選んでいるので、6時半くらいには家を出なければいけない。その前にトレーニングするとなると4時台からやることになります。

そういう早朝練習をやっていらっしゃる人もいますし、私も試した時期もありましたが、それをルーティン化すると、ヘトヘトになりそうということで、昼にトレーニングするようになりました。ただ、週1回は朝がんばってZwiftで息が上がる程度バイクのインドアトレーニングを30~45分くらいやっています。

昼トレのランは昼休み60分のうち30分ほど使って5kmほど走ります。会社にはシャワーがあるので、助かっています。会社の近くにスポーツクラブがあるのでスイム練習する日もあります。

夜練習するのは得意でなく、太陽の光を浴びながら運動したいタイプなので、昼に少しでも練習し、夜はストレッチ、セルフケアなどをしています。

一番時間がとれるのは週末ですが、子どもが遊びたがる前の時間帯に、少し長めのバイクまたはラン。「長め」と言ってもバイク2~3時間。ランは家の近くに里山があるのでトレイルを走ったりします。

前田 ストレッチをしっかり入れていらっしゃるのが印象的です。私はやらなきゃいけないとわかっていながらできてないので、素晴らしいと思いました。

大西 セルフケアはすごく興味のあるジャンルです。大学時代から適宜やってはいたんですが、今は30分走るだけでけっこう疲労が残るので、入念にやるようになりました。

ストレッチしたり、フォームローラー(※下のイメージ写真)で気になる個所をほぐしたりすると、翌朝のスッキリ感が違います。義務化しているというより、気持ちいいからやっているという感じです。

小嶋 私も3歳の息子がいるんですが、時間のやりくりがなかなか大変です。夜8時くらいに帰って、夕食をとって、子どもと遊んで10時一緒に寝てしまうことが多い。

大西 私の場合、時差出勤で始業が早い分、5時には仕事が終わるので、6時半に帰宅できます。食事してから子どもと遊ぶ時間もけっこうあります。

夫婦ともお酒を飲むのが好きなんですが、スケジュール表にもあるように、最近は週2回休肝日を設けていて、その日は子どもと遊んで、9時半くらいに子どもと一緒に寝てしまいます。

晩酌デーはゆっくり飲みたいので、子どもを寝かしつけてから飲み、就寝時間も11時半くらいになります。

仕事に応じて大きく変わる
生活&練習パターン

前田さんの「ある1週間」

前田さん これまで仕事の内容によって生活のパターンが大きく変わってきましたが、今回は直近の生活パターンを表にしました。

「基本は朝が勝負」とスケジュール表の下に書いてありますが、これは以前の話で、今は朝トレをほとんどしていません。

トライアスロンを始めた2013年から18年までは、かなりトライアスロンを頑張っていて、早朝など毎日いろんな時間帯にトレーニングしていました。その頃は、京都の研究所に赴任していたんですが、シャワーや大浴場、ロッカーなどがあって、環境にも恵まれていました。

早朝バイクに乗ったり、昼休みに走ったり、夜の懇親会の前にプールでちょっと泳いだり、トライアスロンのためにやりたい放題の生活。その中でも夜の付き合いが多かったので、朝が大事だということで、朝トレーニングするのが基本のスタイルになっていました。

しかし今は、朝のトレーニングはほとんどしていません。

最近はコロナ下ということもあってレースに出ておらず、今年は2レース出ましたが、3年ぶりの大会でした。レースが近くなると、これよりもっとやりますが、基本的に練習はそんなに多くないというのが、私の特徴かもしれません。

4人の子どもたちも今は全員20歳以上になりましたが、子どもたちが高校時代は部活の試合を応援しに行くのにバイクで片道60km走ったりしていました。「あの子のお父さん、どこでもチャリで来る」と笑われたりしながらも、子どもたちとの時間と自分のトレーニングを重ねることもできた。

それに比べて今はなかなかそういう時間がとれなくて、ロングのトレーニングもできていない。小田原の家は海が近いので、週末はバイクに乗って海まで行き、そのまま海で泳いで、バイクで帰ってくるといったことを楽しんでやっている程度です。

社会人として、隙間時間に勉強したり、仲間たちと勉強会をやったり、いろんなことをしていくのが好きなので、仕事以外のことも色々入っていますが、これが私の1週間です。

大西 子どもの応援にバイクで行くとか、私もやってみたいですね。あと、4人お子さんを育て上げたのはすごい。私はひとりでもヒイヒイ言ってます。

夜ジョグで仕事の脳をリセット
睡眠の質を上げる

小嶋 睡眠時間は短くてもいけるタイプなんですね。

前田 毎年10月に仕事・勉強・トレーニング・移動の時間配分を集計して、振り返っているんですが、平均睡眠時間は2018年には5時間を切っていました。さすがに増やしていかないと長生きできないだろうということで増やすようになり、最近は6.8時間ですから、そこそこ寝ています。

7時間寝ようとがんばっているんですが、年齢のせいなのか、朝はどうしても目が覚めるので、いかに早く寝るかがポイントになってきています。

ただ、早く就寝すればよく眠れるわけではなく、仕事が大変なときほど、いったんリセットしてから眠ったほうがいいので、夜遅くに走ったりしています。

ペースはゆっくり。タイムもとらず、あくまでリラックス目的です。夏だったら虫の音を聞いたり、外の風を感じながら、ゆっくり走ってリラックスしたほうがしっかり眠れます。

寝る前に走れるのは、お酒を飲まないというのもあります。元々ほぼ飲めない体質なので、会食の後でも食べ過ぎさえしなければ、運動はそれほど苦にならない。

あと、移動時間も多いので、その時間の使い方も、睡眠にあてたり勉強にあてたり色々。その時間の使い方も大事になってくるかと思います。

イベント参加者よりZoomチャットコメント:

睡眠時間が少ないように見えます。
私はロングスリーパーなので、平日平均7時間寝てます。
私も練習時間より睡眠優先でやってます。

大切にしているのは
安息の時間

小嶋 私は夜11時くらいに寝て、朝5時起き、1.5時間朝トレーニングしていますが、このスケジュールの中で、前田さんが一番大切にしている時間はどれですか?

前田 安息、ゆっくり休む時間ですね。何かしながらではなく、完全に力を抜いて、無重力状態になる時間。

やりたいことのエネルギーは放っておいても出てきますが、意識的に無になって心の声を聴く時間を上手に作りたい。ずっと元気でいるのは難しいですから。

トレーニングは週末を起点に、平日は夜トレ

福田さんの「ある1週間」

福田 1週間のスケジュールで、緑色が仕事、黄色がトライアスロン、オレンジ色がライフです。

起床は5時半。起きてすぐ30分くらいメールや、社内のコミュニケーションアプリの連絡を見たりといった仕事を自宅でします。それからワンコ2匹の散歩をする。

始業は一応9時ですが、8時くらいからテレワークの打ち合わせや講師の仕事、クライアントの訪問など、仕事で色々な動きをします。

夜は週に1回くらい、仕事先やパートナーとの会食が入ります。

1週間は土曜から始まると私は考えています。

土曜日の7時から12時まで、豊洲ASC(アシックス・スポーツ・コンプレックス)で、トライアスロンスクール。3種目できるのでありがたいです。

豊洲市場でお昼を食べて帰宅し、まとめて家事をやって、目黒の自宅から調布の実家へワンコと行って過ごしたりします。

日曜日はバイクで長い距離を乗るため、MTB またはロングライド。千葉・栃木・埼玉の飯能などに、練習仲間と行ったり、ルミナさんのイベントに参加したりします。夜はコロナ禍で始めたヨガ女子会を大体3人でやっていて、身体を伸ばしながらずっとおしゃべり。楽しいので、こういう時間を大切にしています。

平日は、夜にASCのジムで筋トレしたり、50mプールで泳いだり。会食がある日はせめて歩いて帰ろうということで、家まで1時間くらい歩きます。

他にはオンラインバイクの後15分くらい走ったり、短いジョギングをしたり、ランまたはジムでトレーニングしたり。

自分のスケジュールをまとめながら思ったのは、何かを習得するには長く継続すること、量をやること、頻度を上げることが必要ということです。頻度は毎日なんとかやっているけど、量をもう少し増やさなければと思っています。